海沿いや市場の近くなどで見かける地域猫たち。人懐っこい子も多く、つい「うちで飼ってあげたい」と思う方もいるのではないでしょうか。
しかし、地域猫を勝手に飼うことには、実はさまざまなリスクや注意点が存在します。善意の行動がかえって猫にストレスを与えてしまったり、思わぬ経済的負担を招いたりすることも。
本記事では、地域猫を勝手に飼うことの法的な問題からおすすめしない理由、地域猫を勝手に飼うことが適しているケースまで解説します。
猫にとっても地域にとっても最善の選択ができるよう、ぜひ最後までお読みください。

地域猫を勝手に飼うことは犯罪?
地域猫を勝手に飼うことは、基本的に犯罪には該当しません。地域猫は特定の飼い主を持たない猫であり、地域住民によって管理されているとはいえ、法律上は誰のものでもない存在だからです。
しかし、注意すべき点がいくつか存在します。もし保護した猫が実は誰かの飼い猫だった場合、勝手に飼ってしまうと刑法第254条「遺失物横領罪」に該当する可能性があります。
第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
引用:刑法
法律上、ペットは物として扱われるため、他人の飼い猫を勝手に飼う行為は「遺失物を横領した」とみなされてしまいます。
地域猫を保護した場合は勝手に飼うことはせず、必ず地域猫活動をしているボランティアや自治体に確認を取ることをおすすめします。
地域猫について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。

地域猫を勝手に飼うことをおすすめしない理由

地域猫を保護したいという気持ちがあっても、安易に飼い始めることはおすすめできません。地域で自由に暮らしてきた猫を室内飼育に切り替えることには、想像以上のリスクや負担が伴うからです。
ここでは、地域猫を勝手に飼うことをおすすめしない理由を解説します。
- 猫にとってストレスとなる可能性がある
室内飼育への環境変化は猫に負担となる - 猫エイズや猫白血病に感染している可能性がある
他の猫との接触が多く感染症リスクが高い - 経済負担が想像以上に大きい
医療費や生活費など継続的な経済負担が必要となる
猫にとってストレスとなる可能性がある
地域猫として屋外で自由に暮らしてきた猫をいきなり室内飼育に切り替えることは、猫にとって大きなストレスとなる可能性があります。
広い縄張りを持ち、他の猫たちとコミュニティを形成してきた猫が突然狭い室内に閉じ込められることで、精神的な負担を感じてしまうでしょう。
また、外での生活に慣れた猫は、室内環境に適応するまでに時間がかかります。脱走を試みたり、鳴き続けたり、攻撃的になったりする行動が見られることも少なくありません。
猫エイズや猫白血病に感染している可能性がある
地域猫は屋外で他の猫たちと接触する機会が多いため、猫エイズや猫白血病などの感染症にかかっている可能性が高いといえます。
これらの病気は、猫同士のケンカによる咬み傷や、グルーミングなどの接触を通じて感染するため、感染リスクを完全に避けることはできません。
特に注意が必要なのは、既に猫を飼っている家庭で地域猫を新たに迎え入れる場合です。感染症を持った猫を検査なしで家に連れ帰ってしまうと、先住猫にも病気が移ってしまう危険性があります。
猫エイズや猫白血病は、一度感染すると完治が難しく、生涯にわたって治療や健康管理が必要となる病気です。また、これらの感染症を持つ猫の医療費は高額になることも珍しくありません。
経済負担が想像以上に大きい
地域猫を飼うとなると、想像以上に経済的な負担が大きくなる可能性があります。
特に地域猫は健康状態が不明なことが多く、保護後の医療費が高額になるケースも少なくありません。猫を飼育するには、以下のような費用が継続的に必要となります。
- 初期医療費
健康診断・ワクチン接種・不妊去勢手術・ノミ・ダニ駆除 - 日々の食費
キャットフード・おやつ - 生活用品
トイレ・猫砂・食器・ケージ・おもちゃ・キャットタワー - 定期的な医療費
ワクチン・健康診断 - 突発的な治療費
病気やケガの際の通院・入院費用
特に感染症を持っている場合や高齢猫の場合、医療費は年間数十万円に及ぶこともあります。安易な気持ちで保護してしまうと、経済的に飼えなくなる可能性もあるでしょう。
猫の一生を最後まで責任を持って支えられるか、しっかりと考える必要があります。
地域猫を勝手に飼うことが適しているケース
地域猫を勝手に飼うことは基本的におすすめできませんが、保護が必要な状況も存在します。猫の命や安全が脅かされている場合には、適切な手順を踏んだ上で保護を検討すべきでしょう。
ここでは、地域猫を勝手に飼うことが適しているケースを解説します。
- 地域猫の世話が放置されている
管理者不在で餌や医療ケアが受けられず衰弱している - 周りの住民から虐待を受けている
暴力や嫌がらせを受けており命の危険にさらされている
地域猫の世話が放置されている
地域猫活動は本来、地域住民やボランティアが協力して猫たちを適切に管理しています。しかし、何らかの理由で管理者がいなくなったり、活動が放置されたりするケースも存在します。
餌やりが途絶えて栄養失調になっていたり、ケガや病気を放置されて衰弱していたりする猫を見かけた場合は、保護を検討する必要があるでしょう。
特に、子猫や高齢猫は、適切なケアがなければ命を落としてしまう危険性も高くなります。
ただし、単独で判断するのではなく、まずは自治体や動物愛護団体に相談しましょう。地域猫活動が一時的に滞っているだけの可能性もあるため、状況を確認してから行動する必要があります。
周りの住民から虐待を受けている
地域猫が周辺住民から虐待を受けている場合は、速やかに保護を検討すべきといえます。
暴力を振るわれたり、毒餌を置かれたりするなど、明らかな虐待行為が確認できる場合は、猫の命を守るために行動する必要があります。
動物虐待は動物愛護法違反にあたる犯罪行為であり、放置することはできません。まずは虐待の証拠を記録し、警察や自治体、動物愛護団体に通報しましょう。
そのうえで、猫の安全を確保するために一時的に保護することも選択肢となります。ただし、感情的に行動するのではなく、冷静に状況を判断することが大切です。
地域猫を勝手に飼う前に必ずやるべきこと

地域猫を保護すると決めた場合でも、飼い始める前に必ず確認すべきことがあります。適切な手順を踏まずに保護してしまうと、法的トラブルや猫自身への負担につながる可能性もあるでしょう。
ここでは、地域猫を勝手に飼う前に必ずやるべきことを解説します。
- その猫が本当に地域猫か判断する
飼い猫でないか耳カットやマイクロチップの有無を確認する - 地域のボランティアに相談する
管理状況や健康状態について情報を得てから判断する
その猫が本当に地域猫か判断する
一見地域猫のように見えても、実は誰かの飼い猫である可能性も十分に考えられます。
他人の飼い猫を勝手に保護してしまうと、遺失物横領罪に該当する恐れがあるため、必ず事前に確認しましょう。まず確認すべきポイントは、以下の通りです。
- 耳カットの有無
- 首輪やマイクロチップの装着
特に耳カットは、地域猫を見分ける重要な目印となります。
地域猫活動では、去勢・避妊手術を受けた猫の耳の先端をV字型やさくら型にカットすることで、手術済みであることを一目で判別できるようにしています。
耳カットがされている場合は地域猫の可能性が高く、一方、耳カットがされていない場合は野良猫や飼い猫の可能性が高いといえるでしょう。
地域のボランティアに相談する
地域猫を保護する前に、必ず地域猫活動を行っているボランティアや自治体に相談しましょう。
地域猫は誰のものでもないように見えますが、実際には地域住民やボランティアによって管理されています。管理者に無断で猫を連れ去ってしまうと、トラブルに発展する可能性も否定できません。
突然猫がいなくなれば、管理者は心配して探し回ることになるでしょう。地域全体で猫を見守る活動を尊重し、適切なコミュニケーションを取ることが円満な保護につながります。
どうしても猫を飼いたいと考えている方は、保護猫も視野に入れるとよいでしょう。保護猫は保護団体やボランティア団体によって適切に管理されており、里親さんも募集しています。
保護猫の迎え方について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。

地域猫を飼った後に必ずやるべきこと

地域猫を保護して飼うことを決めたら、猫の健康と安全を守ることが大切です。屋外で暮らしてきた猫は、さまざまな健康リスクを抱えている可能性が高いため、適切な処置を行いましょう。
ここでは、地域猫を飼った後に必ずやるべきことを紹介します。
- 健康チェック
感染症検査や全身の健康状態を確認する - ノミ・ダニの駆除
寄生虫を駆除し人間や他のペットへの感染を防ぐ - 不妊・去勢手術
望まない繁殖や発情ストレスを防ぐため手術を行う
健康チェック
地域猫を保護したら、まず最優先で動物病院に連れて行き、健康チェックを受けましょう。
屋外で暮らしてきた猫は、目に見えない病気やケガを抱えている可能性が高いため、獣医師による診察が大切です。健康チェックでは、以下の確認などが行われます。
- 猫エイズや猫白血病などの感染症検査
- 寄生虫の有無
- 栄養状態
- 歯や口腔内の状態
- 皮膚疾患
特に、感染症検査は重要でしょう。既に猫を飼っている家庭では、保護した猫が感染症を持っていた場合、先住猫にうつしてしまう危険性があるためです。
また、健康チェックの際には、去勢・避妊手術の有無も確認できます。
事前に動物病院へ「地域猫を保護したので診てもらいたい」と連絡しておくと、必要な検査内容や費用についても教えてもらえるでしょう。
ノミ・ダニの駆除
地域猫は屋外で生活しているため、ほぼ確実にノミやダニが体に寄生していると考えましょう。
これらの寄生虫は、猫自身に痒みや皮膚炎を引き起こすだけでなく、人間や他のペットにも感染する可能性があります。そのため、保護後は速やかに駆除を行う必要があります。
なお、ノミやダニの駆除は、動物病院で処方される駆除薬を使用するのが最も効果的です。
市販の駆除薬もありますが、猫の体重や健康状態に合わせた適切な薬を選ぶためにも、獣医師に相談することをおすすめします。
駆除方法には、首の後ろに垂らすスポットタイプや、飲み薬タイプなどがあります。
不妊・去勢手術
地域猫を保護した際、まだ不妊・去勢手術を受けていない場合は、速やかに手術を行いましょう。
地域猫活動では通常、耳カットとともに手術が実施されていますが、すべての猫が手術済みとは限りません。健康チェックの際に手術の有無を確認し、未実施であれば早めに対応する必要があります。
不妊・去勢手術には、望まない繁殖を防ぐだけでなく、さまざまなメリットがあります。発情期特有の鳴き声やマーキング行動を抑制できるため、室内飼育がしやすくなるでしょう。
また、生殖器系の病気のリスクを減らす効果も期待できます。手術の適切な時期や方法については、猫の年齢や健康状態によって異なるため、必ず獣医師に相談することが大切です。
手術費用は動物病院や自治体の助成制度によって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
まとめ

地域猫を勝手に飼うことは法律上は問題ありませんが、さまざまなリスクや注意点が存在します。猫にとってのストレスや感染症のリスクなど、安易に保護することはおすすめできません。
とはいえ、何かしらの理由で地域猫を保護するべきと判断した場合には、その猫が本当に地域猫なのか確認し、地域のボランティアに必ず相談することが大切です。
猫にとっても人にとっても最善の選択ができるよう、適切な行動を心がけていきましょう。

