街を歩いていると、片耳がカットされた猫を見かけることはありませんか?その猫は「地域猫」と呼ばれており、決して虐待を受けているわけではなく、その地域全体で大切に見守られている猫です。
野良猫のように自由に街中を歩いていながらも、複数の地域住民によって計画的に管理され、不妊去勢手術を受けた健康的な猫たち。それが地域猫です。
本記事では、地域猫について野良猫との違いや耳カットされている理由を詳しく解説します。地域猫活動に参加する方法も紹介しているので、地域猫活動に興味ある方はぜひ最後までご覧ください。

地域猫とは?

地域猫とは、飼い主のいない外猫のうち、地域住民の理解と合意を得て地域全体で管理されている猫のことです。ボランティアや行政が連携して、不妊去勢手術や給餌、環境管理を行っています。
地域猫は「TNR」活動を通じて生まれます。
- Trap:捕獲
- Neuter:不妊去勢手術
- Return:放戻
野良猫を安全に捕獲し、獣医師による不妊去勢手術を受けさせ、片耳をカットして元の場所に戻すことで、その猫が地域猫となります。なお、片耳をカットさせた猫は「さくら猫」とも呼ばれ、不妊去勢手術済みであることを示す目印となります。
重要なのは、地域猫として認識されるには地域住民全体の理解と合意が絶対条件である点です。個人の判断で野良猫に餌を与えるだけでは、それは地域猫ではなく、単なる野良猫への餌やりに過ぎません。
野良猫との違い
野良猫と地域猫は、どちらも飼い主がいない外猫としては共通していますが、管理体制が異なります。
- 地域猫:不妊去勢手術を受けており、地域住民で管理されている
- 野良猫:地域住民による公式な管理はされていない
野良猫は地域住民による公式な管理がされておらず、給餌や環境管理もなされません。
一方、地域猫は地域住民の認知と合意のもとで、ボランティアによって計画的に管理され、給餌の時間・量・場所が決められ、排泄物の清掃も定期的に行われます。
最も大きな違いは、不妊去勢手術の有無です。野良猫は不妊去勢手術を受けていません。対して地域猫は全て手術済みであり、繁殖が抑制されています。
猫は年に2〜4回も出産でき、1回で4〜8頭の子猫を産むほど繁殖力が高いのが特徴です。そのため、野良猫からは急速に数が増える可能性があります。
保護猫との違い
保護猫とは、保健所や動物愛護センターから引き取られた猫、または動物保護団体に一時的に保護されている猫のことです。
- 地域猫:外で暮らし続けることを前提としている
- 保護猫:保護団体などに保護され、里親を募集している
施設内やボランティア宅で管理され、新しい飼い主を探すための里親募集が行われています。また、保護猫は室内で飼育管理されるため、食事や医療が完全に提供され、安全な環境が保証されています。
一方、地域猫は外で暮らし続けることが前提であり、施設での保護はありません。保護猫は最終的に家庭での飼育を目指していますが、地域猫の目標はその地域での一代限りの生です。
なお、保護猫の迎え方を知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
地域猫を見分けるポイント

街で見かける猫の中から地域猫を見分けることは、意外と簡単です。以下のポイントを見ると、地域猫か野良猫かの判断ができます。
- 片耳のカット
片耳の先端がカットされている - 被毛と体格
毛並みが良く健康的な体型をしている - 周囲の様子
人による管理の形跡が見られる
片耳のカット
地域猫を見分けるための最も明確な特徴が、片耳の先端がカットされていることです。耳カットは不妊去勢手術が完了していることを示す目印なります。
- 重複手術を防ぐ
- 地域猫として管理されていることを明確に示す
- 手術済みかどうかを瞬時に判断できる
なお、片耳がカットされた猫はさくら猫と呼ばれ、三角形にカットされた耳がさくらの花びらのように見えることが由来です。
一般的にはオス猫は右耳、メス猫は左耳がカットされることが多いですが、地域や実施団体によって異なることもあります。
どのような形であれ、片耳がカットされている猫は地域猫として管理されている猫であることには変わりません。
被毛と体格
地域猫と野良猫を見分けるもうひとつのポイントが、被毛と体格です。地域猫は定期的に給餌されているため、栄養状態が良く、見た目に大きな違いが現れます。
野良猫は食事が不安定なため、毛並みが荒れ、痩せている傾向が強いのに対し、地域猫は毛艶が良く健康的な体格を保っています。
地域猫の特徴は、以下の通りです。
- 毛並みがつやつやしている
- 適度に肉がついている
- 被毛に脱毛やひどいフケが見られない
- 全体的に清潔感がある
これらの特徴は、定期的な給餌と衛生管理がなされていることの証です。野良猫は栄養不足から被毛が毛立ち、脱毛や皮膚病の痕跡が見られることが多く、体格も痩せこけていることがほとんどです。
また、野良猫は寄生虫や感染症に感染しやすいため、外見にもそれが表れやすくなります。
周囲の様子
地域猫が生活している場所には、人による管理の形跡が見られます。周囲の環境を観察することで、その猫が地域猫として適切に管理されているかどうかを判断できます。
- 用の給餌スペースが設置されている
- 排泄物が定期的に清掃されている
- 給水用の容器が用意されている
- トイレスペースが整備されている
これらの形跡は、ボランティアによるお世話と管理がなされていることの証です。野良猫が生活している場所は一般的に食べ残しが散乱し、排泄物が放置され、悪臭が漂っていることがほとんどです。
地域猫の生活場所では、周辺環境の衛生が保たれており、ゴミや汚れがほぼ見られません。
また、注意書きの紙を貼ったり、活動内容の案内を掲示したりしていることもあります。。地域猫の存在に気づいたら、こうした周囲の環境にも注目してみてください。
地域猫活動が重要な理由
地域猫活動は、単に地域内の猫を管理するだけの取り組みではありません。野良猫の増加を抑制し、殺処分される命を救い、猫の健康と福祉を守る役割を担っています。
ここでは、地域猫活動が重要な理由を解説します。
- 野良猫の増加を防ぐため
不妊去勢手術で根本的に抑制する - 殺処分される猫を減らすため
保健所で殺処分される猫の数を削減できる - 猫の健康と福祉を守るため
野良猫が健康的に生活できる環境を実現する
野良猫の増加を防ぐため
地域猫活動の最も根本的な役割が、野良猫の急速な増加を防ぐことです。猫の繁殖力は極めて高く、放置すれば地域の問題は深刻化します。
メス猫1頭から計算上1年で約20頭、2年で約80頭以上に増えるといわれます。さらに、春先に生まれたメスの子猫は、その年の秋には既に出産できるようになるため、爆発的な増加を招きかねません。
猫は生まれた翌年には確実に繁殖できる体に成長(性成熟)し、年に何回も出産できるなど、繁殖効率がとても高い動物です。計算上は、1頭のメス猫が1年で20頭、2年で80頭以上に殖えることが可能です。猫は本能に従って妊娠・出産するだけで、自分で繁殖をコントロールすることはできません。
引用:環境省「ふやさないのも愛」
また、野良猫が増えることで、以下の問題も出てきます。
- フン尿による悪臭と衛生環境の悪化
- 食べ残しからの害虫発生
- 猫同士のケンカによる鳴き声の増加
- 近隣住民との関係悪化
地域猫活動で不妊去勢手術を施すことにより、このような繁殖による増加を根本的に防ぐことができます。TNRにより、その地域の野良猫は一代限りの生を全うし、やがては数が減少していくのです。
早期の対策がなければ、問題は雪だるま式に増え、地域全体の負担となります。地域猫活動は、野良猫の問題を予防し、地域の生活環境を守るための最重要な取り組みといえます。
殺処分される猫を減らすため
地域猫活動が直結する社会的意義が、殺処分される猫の数を削減することです。日本では毎年、多くの野良猫が保健所や動物愛護センターに持ち込まれ、殺処分されています。
2023年度の環境省の「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によれば、全国で6,899頭の猫が殺処分されており、そのうち約64.2%(4,036頭)が子猫です。

この悲劇的な現状は、野良猫の急速な繁殖と対応する受け皿の不足が根本原因です。TNR活動を行えば、新たに生まれる子猫の数が減り、やがては保健所への持ち込み数も減少していきます。
とはいえ、この20年間で殺処分される猫は238,929頭から6,899頭へと減少しています。

もちろん殺処分ゼロを目指すことが我々の目標ではあるものの、地域猫活動を含む様々な取り組みの結果といえるでしょう。
猫の健康と福祉を守るため
野良猫の生活は過酷であり、多くの猫が健康と福祉の面で深刻な問題を抱えています。地域猫活動は、こうした野良猫の苦しみを軽減し、より良い生活環境を実現するための重要な取り組みです。
野良猫は栄養不足から被毛が荒れ、寄生虫や感染症に罹患しやすく、常に病気と隣り合わせの生活を強いられています。冬の寒さや夏の暑さにも耐えなければならず、交通事故や天敵に襲われるリスクも少なくありません。
地域猫として管理されることで、野良猫は安定した食事や定期的な健康チェック、清潔で安全な生活環境を得ることができます。さらに、不妊去勢手術により、出産による身体負担が軽減され、より長く健康的に生きることが可能です。
つまり、地域猫活動は猫たちの苦しみを減らし、その地域で人間と共生する形でのより良い人生を実現させるための動物福祉に基づいた重要な活動といえるのです。
地域猫に関する注意点

地域猫についての理解が広がる一方で、誤った認識により、逆に問題が生じるケースも増えています。地域猫活動は単なる野良猫への餌やりではなく、地域全体の同意と計画的な管理が必要です。
以下では、地域猫に関する注意点を解説します。
- 勝手に地域猫として扱うことはできない
地域住民の認知と合意が絶対条件である - 耳カット=虐待ではない
片耳のカットは麻酔下で安全に行われる
勝手に地域猫として扱うことはできない
多くの人が誤解している点として、個人の判断で野良猫に給餌することが地域猫活動ではないということです。野良猫に毎日餌を与え、その猫を「自分たちの地域猫」と呼ぶことがあります。
しかし、これは地域猫ではなく単なる野良猫への餌やりに過ぎません。
個人による勝手な餌やりは、むしろ問題を生み出す可能性があります。食べ残しが放置され、悪臭や害虫発生の原因となり、結果として周辺住民の反発を招きます。
また、猫が苦手な人や被害を受けている人との間で、トラブルが生じやすくなります。
地域猫活動として成立させるためには、必ず地域全体の理解と合意を得たうえで、複数のボランティアによる継続的な管理が必要です。
耳カット=虐待ではない
地域猫の片耳がカットされている姿を見て、虐待ではないかと心配する方も少なくありません。しかし、片耳のカットは決して虐待ではなく、猫の福祉を守るための必要な医療処置です。
片耳のカットは不妊去勢手術中に麻酔がかかった状態で行われるため、猫は痛みを感じません。出血もわずかで、医学的に安全に処置されます。
なお、このカット方法は国際的に標準化された猫の手術済み判定方法であり、動物愛護の観点からも認められている処置です。
むしろこのカットは、野良猫を不必要な麻酔と手術のストレスから守るための工夫です。手術を受けた猫が再び捕獲され、重複手術を受けることは猫に大きな身体的負担と精神的ストレスを与えます。
片耳のカットにより、一目で手術済みであることが分かり、再手術のリスクから守られています。
地域猫活動に参加する方法
地域猫活動は、特別な知識や資格がなくても、誰でも何らかの形で参加できます。ボランティア活動から寄付、情報発信まで関わり方は多様です。
ここでは、地域猫活動に参加する方法を紹介します。
- 地域猫活動をしている団体に参加する
現場でのボランティア活動に直接参加できる - 費用の寄付や物資支援を行う
活動に必要な資金と物資を提供する
地域猫活動をしている団体に参加する
地域猫活動に最も直接的に関わる方法が、団体やボランティアグループへの参加です。多くの地域では、地域猫活動を推進するボランティア団体や町内会主導の活動グループが存在します。
地域猫活動のボランティアの具体的な内容は地域や団体によって異なりますが、特別な技術を必要としない作業も多く、初心者でも参加しやすい環境が整えられていることがほとんどです。
- 町内会や自治会に問い合わせる
- 市区町村の動物愛護部門に相談する
- インターネットで地元の動物愛護団体を検索する
また、SNSで地域名と地域猫活動で検索すれば、活動している団体や個人が情報を発信していることもあります。ボランティア活動を通じて、地域の猫たちの生活向上に直接貢献してみましょう。
費用の寄付や物資支援を行う
時間的な余裕がない方や直接的なボランティア活動に参加できない方でも、地域猫活動を支援する方法があります。それが費用の寄付や物資支援です。
地域猫活動は多くの費用がかかり、多くの団体やボランティアは資金不足に悩まされています。寄付や物資提供は、こうした活動を継続させるための重要な支援となります。
- むさしの地域猫の会
- 公益財団法人どうぶつ基金
- NPO法人ねこともやまなし
- ピースニャンコ
- にっしん地域猫の会
地域猫に関する寄付金や物資支援を募っている団体は多くあります。上記で挙げた以外にも、まずは住んでいる地域に地域猫活動を行っている団体があるかどうか調べてみましょう。
地域猫に関するよくある質問
地域猫に関するよくある質問をまとめました。
- 地域猫に餌やりしても大丈夫?
必ず活動組織に相談してから参加する - 地域猫を飼うことはできるの?
基本的には地域で見守り続ける存在である
地域猫に餌やりしても大丈夫?
地域の組織されたボランティア活動として給餌が行われている場合は、既に周辺住民の合意や環境管理のルールが整っているため、その活動に参加することは問題ありません。
しかし、個人の判断で勝手に給餌することは、食べ残しの放置や悪臭、害虫発生など、地域トラブルを招く可能性があります。
地域猫に餌やりしたいのであれば、必ず地元の自治会や動物愛護団体に相談しましょう。
地域猫を飼うことはできるの?
基本的に、地域猫を飼うことは推奨されていません。なぜなら、地域猫は野生化した猫であり、人間の生活に適応していないためです。
地域猫として管理されている猫の多くは、既に成猫であり、人間との接触を避けるようになっています。無理に飼おうとすれば、猫に大きなストレスを与え、逃げ出してしまう可能性が高いです。
ただし、地域猫の中でも特に人間に慣れた猫や子猫のうちに保護された場合は、社会化を通じて飼育することが可能です。その場合でも、獣医師や動物愛護団体の指導を受けるようにしましょう。
もちろん地域猫を助けたいという気持ちは理解できますが、家庭で飼育するよりも、その地域で見守り続けることが地域猫にとっても最善の対応であるかもしれないことを忘れないでください。
地域猫を勝手に飼うことについては、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ

地域猫とは、野良猫のように外で暮らしながらも、地域住民の理解と合意のもとで管理されている猫のことです。
また、地域猫活動はTNR活動を通じて野良猫の増加を防ぎ、殺処分される命を救い、猫の健康と福祉を守るための重要な取り組みです。
もしかしたら、あなたの地域でも地域猫活動が行われているかもしれません。あなたの身の回りで地域猫を見かけたとき、その猫たちの存在と活動を理解し、力になれることはないか考えてみましょう。

